南米

1ヶ月ほど南米に行ってきた。大半がブラジルで、アルゼンチン、ウルグアイを少し。

日本からとにかく遠く大抵の旅行者は後回しにしてしまう南米だが、入ってしまえば旅行はしやすい方だ。安全面も一般的な注意は別として、旅行者が立ち入るような場所では特に心配するほどではない感じを受ける。街の中心部は人がいるし、公共交通機関が危ないというようなこともないようだ。

今回の3つの国は、どこも近代的でインフラも整っており、物価は決して安い方ではない。いわゆる街の安宿は概ね1500円くらい、食事も安メシで350円位で、まあBRICsとしてくくられる中国あたりの物価に似ているのだが、市内バスや地下鉄は1乗車で120円位で、生活必需のコストが全体的に高い感じだ。
この間行った北京では地下鉄が運賃を値下げするなど、中国の公共交通機関はかなり安価だ。一応社会主義でもあり、全体の水準を上げるというか、経済的には中間層を厚くしてそれを原動力に国を発展させていくんだという執念を感じるのだが、ブラジルは社会インフラの設計を比較的金持ちの方の水準で行い、快適さを作ったというような感じを受けた。全体として水準が高い代わり、足切りされた貧困層はバスにも乗れず、ファベーラ(スラム街)にいるしかないわけだ。
ということで、先進国からきた南米の旅行者は、基本的にある程度底上げされたその社会インフラに乗って旅行せざるを得ず、わざわざスラムに足を向けることをしない限り、ほぼ安全・快適な旅行になるという訳だ。

もう一つ物価が高いと感じたのは、為替レートのせいもあるようだ。ドルが大きく下げているなか、資源国ブラジルの通貨ヘアルはすごい勢いで上昇しており、現地の日系新聞によると、投資の短期資金もかなり流入してきているらしい。
ブラジルは人口も2億近く、基本的にほとんどの製品がIndústria Brasileira、自国製だ。且つ中国のように輸出して儲けるというか、世界経済にがっちりと組み込まれているという感じが比較的薄く、自国で作って自国で消費するのがほとんどというような感覚がかなり強い。そもそも貿易をする必要があまりないので、全体として外貨自体が弱くなり、レートが悪くなっているのだろう。

言語的にもブラジルはポルトガル語人口のほとんどを抱えるわけで、ほぼこれはブラジル語と言ってもいいのだろう。ポルトガル語の本なんかも、サンパウロでの翻訳というケースがほとんどのようだ。他の南米諸国はスペイン語という国際語を使うのでもう少し客観的で、他の国の中の自国という意識があるように見える。
アルゼンチンに入った国境の街で、商店の女主人が、ブラジル人はナショナリストだからね・・という話をしていたが、確かにブラジルにはそういうところがある。ブラジルのビールはほとんど自国ブランドなのだが、アルゼンチンに入ると、ヨーロッパの銘柄の現地生産と、現地ブランドだがブラジルの会社に買収されたもの、というラインナップになる。そういうところもどことなく国の印象につながったりするのだ。

ブラジルは非常にアメリカ的とでもいうのか、人種や文化は非常に多様なものが調和している訳だし、基本は自国のことだけを考えていればいいというような大国であることは間違いない。とはいえアメリカのように金太郎飴のような街という感じではなく、例えばサンパウロリオデジャネイロを比べても、全く印象は異なる。また、アマゾンの中のマナウスや、ブラックカルチャーがあるバイーアのサルバドール、南のアルゼンチンや牧畜文化の影響を残すポルト・アレグレ、そして人口都市ブラジリアなど、どの街も魅力的で異なった顔を持っているのが面白い。

人間関係もベタベタしない欧米的なマナーで、もう少しアフリカ的な感じかと思っていた当初は意外感をもったのだが、優しさや人なつっこさというのがじわじわと出てくる感じで、悪くはない。

アルゼンチンはスペイン語だがイタリア的で、ブエノスアイレスは特にそうだ。今回はロサリオとブエノスアイレスしか行っていないが、南極に近い南の方が観光には良いかもしれない。ちなみに、ブラジルは米を食べるが、アルゼンチンはパン食だ。ブエノスアイレスはかなりイタリアンに近いメニューが多かった。イタリア移民がかなり多く、国自体もアイデンティティをヨーロッパに置いているのだろう。
アンティークと古本屋が多いブエノスアイレスも、美しく都会的ないい街だったが、なぜこの国がデフォルトを起こしたのかは、よく分からない。

ウルグアイは、ほとんどの日本人にとってイメージがわかない国の一つだろうが、比較的リッチな印象を受けた。バスで通り過ぎる高速から見える家が、ゆったりしたヨーロッパ調の家で、道に面して大きなガラスの窓を持っている。これは安全だということだ。調べてみると、社会福祉が整った国なのだそうだ。
首都も特段見るべきものもなく、あっさりした感じの国だ。夕方に街をうろついていたら、まあまさに日本の裏側に位置する国で、ずいぶん遠くまできたなあという感傷には浸れるのだが。

写真
http://picasaweb.google.com/otsuka39/Mercosul

ブラジルは“落ち着いた”新興国だった
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091105/193404/
この人は同じタイミングで行ったようだけど、やはり中国と比べている。